【作ってみた】マカオ行きたすぎたのでエッグタルト
将来の不安に目を向けないように、ぼんやりと過ごしていた午後。
マカオの善い報せが届いた。
もう1か月以上新規のコロナ感染者がいなくて、
19日に最後の感染者が無事退院したので感染者ゼロになったのだという。
かなり早期に徹底した対策を始めていたマカオ。愛している、愛していると、まるで言葉を教えてもらったばかりの若輩者のようなせりふには込められない感嘆がこみあげてくる。
昨年の追憶が胸を締め付ける。食い倒れなんて当たり前だと思っていた、あの日。
こんな日が来るとは、思いもしなかった――
その想いに突き動かされ、あの気持ちをもう一度再現したくて——作った。
エッグタルト。
マカオのエッグタルトはパイ生地なのだ。
だがNinjaには、パイ生地を作るほどの勇気と忍耐がなかった。
スイーツを作るのに必要な潔さも。
無骨なおやぢが切り盛りする近所のスーパーで買ってきた冷凍パイシート。
おやぢの口臭にはいつも閉口するものの、今はマスクをつける時代。
きっと大丈夫、と買いに行ったけれど、ダブルマスク(Ninjaとおやぢの)を通してもほのかに香るおやぢの口臭。
マスクによってブーメラン状態になるのでは、とNinjaはいぶかしがったが、ふぐが自分の毒で死なないように、ジャイアンが自分の歌を聴いて卒倒しないように、おやぢも平気そうだった。
コロナによってわかったことのひとつだ。
かくしてNinjaのエッグタルトは完成した。
固めのプリンに、しっとりと温度を含んだ夢のようなバターの香り高いパイ生地があいまって、Ninjaの味蕾はさまざまな分析をやめてただ「おいしい」とだけ答えを出した。
Ninjaが夢想していたのとはまるで違うルックス。店頭に並ぶこのこたちがどんなに誇り高く自信に満ちているだろうかと想像するだけで、Ninjaは身の縮こまる思いをするのだが、同時に、あんなにえ~かげんに作ったのに、これほどまでにおいしいとは。とも想い、ひそかにプライドを取り戻していた。
#十月初五日街 にある、朝食で有名な店。
マカオは自由だ。
今日も彼らはおかゆや軽いヌードルの朝食を楽しんでいるかもしれない。
そのデザートにエッグタルトを食べるかというとそうではないかもしれないが、あの店では今日もエッグタルトを焼いているはず。
次にあの通りを歩いたとき、Ninjaはきっと泣いてしまうだろう。
エッグタルトをほおばりながら、ありがとうありがとうと、これまで不義理をしてきた神にお礼を言うだろう。大切なことなのできっと3回は言うはずだ。
幸せな涙にくれながら。
またね( ´ ▽ ` )ノ